『アルコ−ルスト−ブ/アルコ−ル・バ−ナ−』
個人的には、40年ほども前から実際の徒歩&ヒッチハイク旅行で、使っていた『簡単な炊事用コンロ』の一つ。一般的に『アルコ−ルスト−ブ』と、呼ばれているのだが私自身は、最初に使い始めた10代ノ終わり頃から『アルコ−ルバ−ナ-』又は、『アルコ−ル・コンロ』と呼んでいた時間のほうが長くて、愛用している用具の一つとしても、『バ−ナ−』と呼ぶ方が、この用具に対しては好きだ。
最も頻繁に冬季クライミングや、厳しい条件下で愛用していた『ボルド・バ−ナ-』も最初から使用する、液体燃料には『アルコ−ル』を選んでいたし、その選択は当時から正解だったと信じてもいる。60年代の固形缶の燃焼用具の想い出から、初めて本格的な『火器』として、この種類の『用具』を使っているので、時折、アルコ−ル使用の、単純な燃焼器具は登山では役に立たないと言う意見を聞くと、使いもしないでとは感じてしまう。限界値を体験から知り、使い方を工夫すれば現在入手・可能な製品は充分に役立つ用具だ。
しかし、高火力で携帯性にも優れ、使用方法も簡単な各種『スト−ブ/コンロ』類が、選ぶのも大変なほどに各種・大量に市販されている現在では、比較対照で『アルコ−ル・バ−ナ−』は、火力の弱さや、火加減の不便さ、いちいち環境ごとに工夫する面倒さ、技術や知識の欠如をカバ-してくれない、古い用具としてしか認められていない部分も大きい。それでも、幾つかの欠点・デメリットを含めて、私個人は今現在でも使い続けている、使って楽しく、そして便利な『火器』の一つではある。

1950年にスウェ−デンの『トラング』と言う街で創業された、、世界で最も最初に完成形としての『アルコ−ル・バ−ナ−』を製造・販売したメ−カ-で、創業の地の名称を由来として現在も『トランギア/trangia』として古くから登山者の間で、愛用者が存在していたが70年代から、各国のバック゜・パッカ-や徒歩旅行者、バイク・ツ−リストからも評価を得ていて、2002,年頃から日本国内でも構造の簡単さで、メンテナンス・フリ-で、誰でも手軽に使える点や、他の液体燃料・系の『スト−ブ/コンロ』や、一般的に多くの人達が使っているガス・ボンベ・タイプのスト−ブとは異なる、シンプルさ等、人とは少し違った用具を持つ楽しさや、価格も少しばかり安いという理由で、利用者が増加し出した。各種・情報誌でも再評価するコメント記事も、何故だか急増し出して、かなり古くから飲料品・アルミ缶を改造して自家製『アルコ−ル・スト−ブ』を作るための、ノウハウも知られていて、30年ほども前の雑誌の中にも実用的な技術が書かれていた。そういった工夫をヒントに、更に改造技術が改良されて、この種の『アルコ−ル・バ−ナ-』を、自作・改造して楽しむ人達も多くなった。海外アウトドア用具メ−カ-が、発信している動画の中にも、手作りの為の情報を上手にまとめた映像が多くあって、以前よりも簡単に自作する人達に役立ってもいる。市販品の中にも、その種類の物も、選択・購入出来るようになった。基本形は、『トランギア製のバ−ナ−』
90年代には、どの地域の『登山シヨップ』を見回しても、この種の『火器』の種類は少なくて、『アルコ−ル』を燃料とする登山用の『スト−ブ/バ−ナー』=『登山者の多くは、コンロと呼ぶ』火器の種類は、少なくて市販品として知られていて、購入が可能な製品は3種類あれば、多い方だった。

『日本製』の、この種類の『アルコ−ル・バ−ナー』は、実は一時期かなり数多くの種類が情報の中では、知られていたが量販品として今現在も、購入が可能な製品は数種類。現存する、国産品の中には大阪の町工場が製造している、意外と高品質な製品も含まれてはいるが、あまり一般的ではないようだ。私が高校生だった頃には『短独行』等の本の中での冬季山行での使用などで、この種類の用具を情報として知っていた。2005,年・頃から『アルコ−ル・バ−ナ−』に、再び?注目・人気が出だしたので、少し用具類の研究や消費者・希望の意識や情報に敏感な、シヨップでは最新の製品も販売し出した。カタログや情報誌が提供している、デ−タ-から見れば、かなり多種類の製品が出回り出していて、チタン製の超小型・軽量モデルなども市販されていて、選ぶ楽しさも増えて来た。
誰でも、小中学校の時代に、理科室などでの実験・授業で一度は、御世話?に、なった記憶は無いだろうか?ガラス容器に燃焼用の繊維紐が、入っていて心棒に火を付けて使う『アルコ−ル・コンロ』野外用の小さな『バ−ナー』の中には、この単純な原理・構造を利用した最も、シンプルな『バ−ナ−』も存在しているが、繊維紐に燃料を吸い上げて、必要な火力を得るという部分に不足は多い。一般的には『燃焼器具』としての機能の基本は、やはり1950年に製作された『トランギア・アルコ−ル・バ−ナー』の、構造が優れていて、故障することも無ければ、間違った燃料を使用したり、常識外の使い方さえ、しなければ不具合が生じる危険性も、本当に少ない。灯油やガソリン燃料と違い、給油時に手に付着しても、さっと揮発するので扱いは楽だ。
でっかくて、やたら燃費が悪くて『見栄と自己満足』を、具現化しているような大型・自家用車に大量の野外遊び用具を満載していながら、やたらに『アウトドア文化とか、エコ』的な、ライフスタイルを声高に提唱・発信して、目立つ人達が、野外で使う『燃焼器具』の話題で、ミニマムとか、ロ−インパクト・自然に優しい、とかのスロ−ガンで、高尚な主張を繰り返されても、消費の先に消滅する事が判りきっている『ガソリンに代表される、化石燃料』を使うしかない、各種『アウウドア用具』の、解説を繰り返されても、その『エコロジカル』な活動と言うものに、あまり信憑性や信頼は無い。

『アルコ−ル』を燃料とする、現代の小さな各種『バ−ナ-/スト−ブ』に関しても、ガソリンやケロシン、そしてカ−トリッジに封入されたガス燃料の『火器・器具』と、単純に比較して明らかに『エコ的』だと言う、意見にも少しばかり、矛盾があるようだ。ランニング・コストの比較でも、ガソリンとアルコ−ルを比較して、同じ容量で、必ずしもアルコ−ル燃料の方が安価だというのも、間違いで、燃料を効率的に利用するという部分では、僅かな製品を除いて『アルコ−ル使用の燃焼器具』には、もう少し工夫が必要だろう。

アウトドア用具を販売している、シヨップで『アルコ−ル・バ−ナ−』を購入しても、不思議な事なのだが、この用具の純正・液体燃料が購入できない、場合も多く、販売していないという、不便さも問題。
(上・資料写真)ランタン用の、燃料は石油の精製品で『アルコ−ル・バ−ナ-』の燃料として使うのには、煤の発生があって薦められない。同じく『ガソリン』も、やはり薦められない。一般的には『薬局』で購入できる『消毒用アルコ−ル』や、コ−ヒ-・シヨップでも、売られている場合がある『燃料用アルコ−ル』を、専用・燃料として使うのが良い。毎回、アウトドア情報誌の用具・説明などの記載に『高純度・アルコ−ル度数の高い・酒類』でも、使用できるとか、そういった記述が飽きもせずに書かれているが、そんな状況が、常識的に考えて一般使用者が高価な酒類を燃料に、炊事や温かい飲み物を作ると言うのも、理解し難い。
『トランギアのアルコ−ル・バ−ナ-』に使用する『消毒用アルコ−ル』は、薬局などで購入できるが、市販品の容器は密閉性を高めるために、キヤップが二重になっていて、内蓋は手袋などを着用している時には、開閉が厄介で、容器そのものの強度も不足している。必ずしも、専用の『燃料用・容器』を別に用意しなければ、ならないと言う訳でもないが、ザックに収納して携帯する場合には、やはり使い易くて強度にも不安の無い『容器・ボトル』を使用する方が安心ではある。一般的にはシグ等の『金属製ボトル』を、使用する人が多いが、私個人は90年代から入手できるようになった『高密度ポリエチレン樹脂』の、専用ボトルを愛用している。
化粧用の別売『小型容器』や、最近ではチタン製アルコ−ル・バ−ナ-を次々に製造している、メ−カ-が販売しているコンパクトで、非常に軽量な『専用容器』の使用も、お勧めだ。

日中の使用時の注意点として『一般的なアルコ−ル・バ−ナー』は、燃料をバ−ナ-本体に注入後、点火させて一定の火力が保持され出しても『炎』を、肉眼では確認し難い。夜間には、確認しやすいのだが日中の晴天時、野外で使用していると着火したのか、炎が出ているのかが判り難いという、ある意味『欠点』が、あるので慣れていないと、火傷の危険を誘発しかねない。特に、このタイプの『火器』の、扱いに慣れていない方は最初は注意した方が良いでしょう。燃焼音も、殆ど無いので燃焼の確認時に、無用な危険を起こさないように。
30,年間も使い続けている、一種の『アルコ−ル・バ−ナー』名称は、『ボルド・バ−ナ-』使用する液体・燃料にアルコ−ルが、使い易かった(本来は精製されたコンロ用ガソリンや『ベンジン』を使用する)。火力をガスコンロ類と比較したり、他の火器と『一定の湯を沸かす時間』のみで、優劣の順位を競うような、情報だけで単純に、この種類の『燃焼・火器』を語るのには、抵抗感がある。
『ボルド・バ−ナ-』等を、使ってみると意外なほどの火力の強さに驚くだろう。風防効果を高め、燃焼の為の補助的な燃焼効率を高める、工夫で単純で古典的な『アルコ−ル・バ−ナー』でも、充分に活用出来る。
極端な低温化では、全く使えないと言う意見も拝聴に値するが『プレ・ヒ−ト』用具を併用すれば、厳冬期の八ケ岳の様なマイナス5度・以下の環境下でも、充分に使用は可能だった。
個人的には『専用・付属品』を、使用する事は少ないが『123や8R』でも、付け加えて冬季の使用で活用できていた、小さなグラス・ウ−ル等の、切れ端1片を付け足す事や、雪面との接触部に少しだけ工夫さえすれば、だれでも寒冷地で使える筈。

ただし、本格的な厳冬期のクライミングや防風が全く期待出来ないような、もしくは、緊急時ビバ−クの様な本当に厳しい自然条件では、故障は無くとも、火力を含めて、お薦め出来る用具ではない。
(下・資料写真)アルコ−ル・バ−ナ-に付け加えた、風防・兼の『組み立て式ゴトク』と、ケトルが適正な位置では無いと見えるが、自然環境下では風で『炎が揺れる』のは当然。ケトルの握り、が必要以上に熱くならない為に、わざとズラシテある。『着火後の炎』が、見え難いのは、この種のバ−ナ-特有の状態。
極端な低温下では、これらの普及している『アルコ−ル・バ−ナ−』の多くは、着火が難しくなる場面もあり、安定した火力が得られるまでに時間が必要となる場面も、多い。『バ−ナ−-本体』を強制的に、温める器具も市販されているし、本体の底部を工夫して少しだけ、持ち上げて飲料類のボトル・キヤップに僅かな燃料(アルコ−ル)を入れて、一種のプレヒ−トとして、火を付けて着火を容易にし、簡単に火力を引き出すという方法も、この種の用具を使い慣れている人達には、普通の方法でもある。要するに、環境や条件に合わせて、工夫するという事が、大切で、例えばテッシュ1枚でも、充分に役立つ時もある。
真鍮製品の、趣やノスタルジックな雰囲気とは別に、機能性を優先するならばステンレス製品が良い。
国産の代表品で、小さく畳めるゴトクを足しても、お買い得な価格なので、最初に1台、使ってみようと考えている方には、御薦めだろう。
車のラゲッジ・スペ−ス、収納・引き出し部に、常備しておくのにはコンパクトで燃料ボトルとシェラカップ、その他の用具と共に、頻繁に活用している。
国産の『エバ−ニュ−製アルコ−ル・バ−ナ−』は、腐食の心配の無いステンレス製品なのと、価格も安いので手軽に、このタイプの燃焼用具を使ってみたい方には、お薦め出来る物なのだが、少しばかり品質的に褒められる用具とは言えないのが残念。『トランギア』や、最新の製品と比較しても、燃焼効率や低温化での使い勝手が良いとは言えず、この種の『アルコ−ル燃料で使うバ−ナ−』特有の、弱点が目立ってしまう。そういう訳で、欠点の一つでもある風に弱く、燃焼効率の悪さを補う意味で、他の用具と組み合わせて、弱点をカバ−する工夫も必要だ。私が使う方法の一つが『ネィチャ−・スト−ブのL型』と、組み合わせて使う方法でかなり燃焼効率を高めて、使い勝手が良くなる。

この『ネイチャ−・スト−ブ』の中に『アルコ−ル・バ−ナー』を入れて、使う方法で一人分の『フォンデュ』を、ゆっくりと楽しむのが定番メニュ−の一つ。火力の強弱は『アルコ−ル・バ−ナ−』の下に、付属の火力調整キヤップや同じ、付属している本体のキヤップを下に重ねて、高さを調整する。平たい石を、拾って来て敷くという手もある。基本的に、使用途中に火力そのものを細かく、調節する種類の食材は使い難いのは、仕方が無い。(下・写真)で、組み合わせて使用しているのは、最も普及している『トランギアのアルコ−ル・バ−ナ−』で、20分間〜程度の燃焼で、一人で簡単に楽しむ調理・食事で利用する機会が多い。
厳寒時に使用する場合には、基本的に『バ−ナ−本体』を雪面や地面に直接、置かない。火力調節蓋を下に敷くか、専用に用意して持って行く『敷き板』等を併用して、風防は必携品。氷瀑・観賞ハイキングやアイス・クライミング講習会などで、冷え切った手・指を素早く温める用具として、かなり昔から活用して来た。一種の野外『火鉢』的な使い方なのだが、クライアントには毎回、この小さな炎は好評です。

1970年代の後半から80年代の初期に関西近辺ながら、本当の冬季登山で貧乏な私達は、この用具をツエルト一枚のビバ−クで使用していたが、防風に叩かれ、翻弄された稜線や岩壁では、全く使う事が出来なかった条件が合った。今の様に、工夫した補助用具も無ければ、他の予備火器も持ち上げて来るほどの金銭的な余裕も無かった頃なので、とても惨めで寒い夜を過ごした。趣があり、ノスタルジックな用具ながら、本格的な登山や厳しい状況が予想されるチャレンジには、わざわざ使う必要、選択は無い。
国産のステンレス製『アルコ−ル・バ−ナ−』と、小型のカップの組み合わせ。プラスチックの超軽量なスプ−ン1本と、バ−ナ−専用の『ゴトク』も、小さくカップと組み合わせて携帯している。
樹氷ハイクや『凍る滝・観賞ハイキング』で、気楽に数杯の紅茶を飲むのに、最適なコンパクト・セットの一例