行動食/レ−ション・パック』 |
『甘納豆とニボシ』冬季の北アルプスで、アルコ−ル・バ−ナ−で雪を溶かしながらテントも持たずに、長期の本格的な山行を続けていた人は、今の様に恵まれた装備はおろか、食料関係も乏しく『カロリ−』等の計算なども、考えもしていなかった。簡単にエネルギ−を補給できる、パワ−・バ−やブドウ糖タブレット等を使い出したのは、最近の事だが、以前にも似た様なお菓子は利用していた。『ココア・タブレット』に似た、ドイツ製のインスタント飲料や、現在の『パワ−・バ−』と良く似た、フル−ツを混ぜ込んだ、柔らかめのビスケット・タイプや、スポ−ツ・ドリンクとして入荷し出した『ゲ−タ・レ−ド』の粉末等。しかし、どれも登山専門店で購入するしか無くて、貧乏学生には常時・使える、食品・行動食にはならなかった。 揚げド−ナッや板チョコ、レ−ズン入りのクラッカ−等を最初の行動食として、使い始めた頃からカロリ−を気にするようになった。ドライ・フル−ツを幾つか種類を、取り混ぜて使うようになったのはヨ−ロッパ・アルプスのクライマ−の影響が大きく、近藤先生の訳したフランス圏のガイド・クライマ−の昼食や山頂で、憩うシ−ンの記述からも、刺激されたからだ。パワ−・バ−やゲ−タ・レ−ド等を使い始めたのは、アメリカでのアウトドアやクライミングからの影響で、徐々に登山&クライミングにもスポ−ツ科学やサプリメント効果に関する、知識が応用され出した1970年代の後半からで、行動食の質に変化が起きた。 |
同じ物を数多く持つのは、味覚的にも飽きてくる。そして、チョコレ−ト類も含めて、甘い物ばかりでも良くない。適当に塩分補給も行えて、食感にも変化がある物も加えておくと変化が出て気分も楽しくなる。 ドライ・フル−ツそのものを小分けして、幾つかの種類を持つのも良いし、ドライ・フル−ツが混ぜられたシリアル・ビスケットや、それに類するビスケット類も食べやすくて便利だ。 ヨウカンも日本人の味覚には馴染みがあって、とても小さくパックされた物ならば、重量的にパックの中に混ぜておいても、甘味に変化が出て良いものだ。 『パゥンド・ケ−キやフル−ツ・ケ−キ』の一つずつ、梱包・パックされた物は、メインの食品として使うのにも適している。アルコ−ルを少し、含んだ物は少しだけ日持ちが良い。 酒の「つまみ」タイプで売られている『おつまみシリ−ズ』は、小量ずつ幾つも種類が販売されていてビ−フ・ジヤッキ−の様な古典的な物から、ドライ・ソ−セ−ジやサラミの薄切りパックまで、食事らしさを少量で感じられるので『お子様タイプ』で、甘いものにしか興味が無い人を除いて、利用する価値は高い。 |
季節環境や行動パタ−ン、それ総合・日数の違いで『レ−ション・パック』の、内容は大きく変るのが私のパタ−ンだが、四季を通じて、同じ種類と量で構わないと感じている人も多く、一概に、細かく種類を分ける必要は無いが、ある程度・経験を積み出すと『パック内容』に、変化を持たせたくなる。 『レ−ション・パック』を、一度で消費(食べ切る)量数で計算するか、余裕を見て緊急時に残量を残しておくかの判断は、その活動・内容に照らして計算するのが良いと思う。私は、ずっと全体・量を多目に計算して、必ず下山後に残量が残るように工夫し、残るように努力して活動して来た。それが、習慣となっているので、いつも予備の『パック』は開閉部を、酒の肴や車中の、暇つぶしに利用する為に開ける意外は利用しない。 ラクダや熊の様には、決して『食いだめ・満水腹』で連続・行動出来ない人は、身体が緊急事態に陥る前に、必要なエネルギ−を適切に補給する必要がある。根性論や気合だけでは、乗り越えられない場面に遭遇する前に、緊急・予備の食品類や水分を摂取しなければ、生きてはいけない。 『行動食/レ−ション・パック』の基本を、糖分を基本とした甘い物ばかりで構成している人達が意外と多い。専門的・特殊な加工で、長期間の登山やトレッキングに向いた『食品』も、現在では数多く出回っているのだが、そういった『食品』は、登山・専門店や特殊なシヨップでしか販売されていない。そういった理由で、ス−パ−・マ−ケットやコンビニで手軽に入手・可能なジェル・タイプやカロリ−・メイトに代表される固形物を購入してしまうので、概ね味が甘い物に偏る傾向があるようだ。 塩味やスパイス系の、大人の味が楽しめ、肉を感じる『携行食』は、ビ−フ・ジヤッキ−の様に堅く、乾燥させてあれば水分の含有量が、少ないので比較的・軽量な食品として使えるが、大抵は水分量が多くて、重量面でのデメリットから、中々、量を多くは持てない。 夏期と残雪期、秋と冬の『レ−ション・パック』は、食品・内容を変えている。一年中、同じ物で構わないと言う人や、これしか食べれない、こだわりを持つ人も多いが、私は、かなり活動の内容により多種類のパタ−ンを採用していて、使用している食品の種類は非常に多い。 一口パックの『ゼリ−』や、昔から利用者の多い『パック入りフル−ツ・ゼリ−』や『羊羹・ヨウカン』は使用頻度の高い行動食だが、主に残雪期のアプロ−チ初日に利用する事が多く、冬季のクライミングで持参する場合は、小量の事が多い。ガイド山行の時には、クライアントの疲労時に口に入りやすく、水分も同時に補給できて、携帯に便利なフル−ツが固形で含まれている『ゼリ−』を、必ず数個・緊急パックに加えて持参している。このタイプの食品は、あまり好き嫌いで拒否される可能性が無くて、保存に問題が無く 誰にでも好まれる食品だが、水分量が多いので重量的な制約で、大量に利用できない。 残雪期には、雪に埋めて冷やして食べる事が可能なので、利用価値は高まる。 価格に大きな、差異があり、個人で使用する場合はデパチカの高級・和菓子店や洋菓子店の、少しばかり高価な種類を選ぶのが楽しみ方の一つではある。 |
棒状に表面を堅く成型した『サラミ・ソ−セ−ジ』は、日持ちも良くて携帯性にも優れている。雑なパッキングでも、こういった固形物ならば、変形したり中身が潰れてザックの中を濡らすようなことも無くて、行動食の一品として『肉を感じる、食感』と共に、味にも変化が期待出来て楽しい。嗜好によるので、こういった油分を含んだ食品が嫌いな人には、向かないが脂肪分を含んだ『肉類』は、雑穀類や小麦粉を使用した、一般的な・お菓子類やクラッカ−&ビスケットと比較すれば、単純な比較ならば約3倍の『カロリ−』を有していて、激しい運動後のエネルギ−補給には、必要要素が高い。 私や仲間達の、体験例だが海外でのクライミングでは、アプロ−チに厳しい過程が存在せず、出発地点やベ−スで、潤沢な食料類の補給が容易な環境では、重量のある『肉類』を岩場でのクライミング初日に食べる事が多く、最初のビバ−ク地点で豪勢な夕食と言うのも『可能』だ。グリルド・チキンやミ−ト・ロ−フをアルミ・フォイルで包んで、食べた事も多い。国内でのクライミングでも、継続クライミングのスタ−ト日に備えて、鳥の『カラアゲ』や神戸の某・専門店の『脂身が絶品の焼き豚』を、よく持参したものだ。 自家製の『鶏肉と豚肉』の、カラアゲは前夜に、普通の『カラアゲゲ肉』よりも、水分を減らす為に、何度かに分けてカリカリ状態まで油で揚げて、充分に油切り・してからキッチン・ペ−パ−で更に油分を拭取った手間の必要な『食品』だったが、毎回、仲間達からも好評で冬季ならば数日後の夕食で、変化のある食材として有効に活用できて、下手な『ペミカン』などよりも、利用範囲は多かった。 『サラミ』類も、最近ではスライス・パックの便利に使える物も発売されていて、少量ずつ使える事から利用するのにも便利になった。同じ様に『スライス・パック』された『焼き豚』等も、インスタント・ラ−メンに付け足す、だけではなくて行動食のパタ−ンの中で、他の穀物系・食品と組み合わせて使うと『食事らしさ』が倍加する。 |
世界の中で、1日の食事回数が確実に朝食、昼食、夕食と3回に分けて摂取できるのは恵まれた国々だ。 特に、昼食に非常に高カロリ−な食物を大量に消費している、国と言うのも本当は恵まれていると思うべきなのだが、飽食と大量・消費・放棄を繰り返して、登山やアウトドア活動の中でも山小屋から提供される、ちゃんとした『昼食』を期待する、人達が増加して、食の質を求める状態が普通と思われている現在の日本では、粗食に近く、満足な味や量を求められない『レ−ション・パック』の内容に不満足を抱く人は多い。 特に、米食を基本とした食習慣を長く続けて来た、人達にはクラッカ−やチョコレ−ト等の一般的には子供のおやつに近い感覚の食品で『昼食』とする感覚に慣れるのは難しいと言われる事が多いが、基本的に一度の食物の摂取で、よしとする生活の中での『昼食』と、行動時間内で数回に分けて、少しずつ摂取して消費したエネルギ−を補給する『行動食』のシステムは、根本的に考え方が違う。 数分から10数分、休憩時間の中で時には立ったまま簡単に食品を口にする事が可能な『レ−ション・パック』使用は、一般的な『食事』の感覚ではない。水分と同じく、早目に少しずつ体内に補給する考え方が重要で大切だ。 クライミングを終えた『山頂での一時の、憩い時』チュ−ブ入りのコンデンス・ミルクと水筒の冷えた、紅茶に一握りのドライ・フル−ツを、口に含む楽しさ。1970年代から、翻訳本の仏系ガイド・クライミングで描写されたシ−ンから、行動食パタ−ンに影響を受けたクライマ−は多い。当時は『スクイズ・チュ−ブ』は入手できたが、市販品でチュ−ブ入りのコンデンス・ミルクは日本国内では販売されていなかった。缶入り物をチュ−ブゆマヨネ−ズの空きチュ−ブに詰め替えて使用していた想い出が甦る。ドライ・フル−ツが『レ−ズン』ぐらいしか購入できなかった頃だ。今なら、好きな物が簡単に購入できる。 渡欧時に仲間への、土産に現在のような軽いラミネ−ト・チュ−ブではない、重いチュ−ブ入りコンデンス・ミルクを大量に持ち帰った。涸沢での一夏は美味しい『ミルク・ティ−』の、評判は稜線を超えた。 『カロリ−・メ−ト』が、発売されて間もない頃に『雑誌・企画』で支援・協力した、山での食事・企画、取材時に 写真モデル担当で、かなり大量に当時は。まだ珍しかった試供品を利用できたが、個人的に好きかと聞かれると、好みの食品とは言えない。当時は単一の『味』しか存在していなかったが、現在では数種類の味のバリエ−ションに増えて、缶入り飲料タイプにも人気が出ている。 高齢者・介護の範疇から『山でも使い易い』行動食に適した、食品類が登場している。『流動食』タイプから『トロミ』に代表される、飲み込み易く加工された食品類は高カロリ−食と共に、高所や疲労時の食品としても利用価値は高まっている。 厳しいコンディションが想定されるクライミングでは、基本的に『軽量化』が要求されるが、例外的なクライミングも存在している。以前とは違って、耐久性・抜群のホ−ル・バックや、効率的に重量物を岩壁で、引き上げる技術と用具の扱い方をクライマ−が、身に付けてから数日間を要する『岩壁』での、食料品の種類にも変化が生じた。この種の『ビッグ・ウォ−ル・クライミング』での、タクティクスでは、これまでの背負って登る旧来のクライミング・システムとは全く、異なる岩壁の中での生活がおくれる。 ただし、この種のタイプのクライミングが、頻繁に、そして一般的に日本国内の岩場で実践できる訳では無いので、実際に経験する機会は少ないだろう。こういったシステムを採用する、本格的な『ビッグ・ウォ−ル』に、備えてシュミレ−ショ・トレ−ニングするのも、実は、かなり楽しい。 この練習に適した岩場は、別に高い山やアプロ−チに苦労しなければ、たどり着け無いという場所にだけ存在する訳ではなくて、意外と忘れられた岩場にも数多く、残っている。 |
チュ−ブ入り・粘性食品や、現在では広くスポ−ツ・ジャンルで愛用者が増えている『ジェリ−・タイプ』の、栄養補助食品ならば、携帯に不便も感じなければ重量的にも、使用できる範囲は広いが、缶入り、瓶入り飲料に関しては重量と共に、摂取後のゴミとなった容器の重さも、問題だ。持ち込んだ物を、全て下界に持ち帰る必要があるので、こういった容器の重量や嵩は、使用前に充分に計算して利用を考えなければならない。 缶詰・食品をクライミングや冬季の山行で、使う登山者・クライマ−は現在では、殆どいない。 利用後に、小型のクッカ−としての役目を果せるタイプの『缶』には、実は利用価値は残っているのだが、物が溢れ『チタン・クッカ−』が、基本と感じているようなクライマ−には、この辺りの臨機応変な用具・利用の発想は思い付かない。コンロの風防が、市販品タイプしか使えないと考えているいるクライマ−も多い。 冬山で濡れた手袋を、炊事使用のガソリン・コンロで効率的に乾かすという方法を、実践していた私の先輩は、その方法や実践から得た、知恵を記録の様には紙面に、公表しなかった。 そういった技術に関わる『知恵』は、知識とは少し違う。食料に関しても、知識よりも個々の体験の積み重ねと、失敗から身に付けた工夫や、アィディアに負うところが大切だと私は思っている。 一つのシステムや知識・技術や固定化された『情報』だけを、頼らずに創意工夫する姿勢こそが大切だ。 まずは、日常の食生活の固定化された、パタ−ンから抜け出して、周囲を見渡して見よう。乾燥納豆から、テンペや粉末トマト等、これまでに知られていなかったような食品に、数多く出会えるはずだ。 メタボの友の様で、美味くもない自家製ペミカンや棒ラ−メンにジフィズ、粉末ス−プを毎回、同じ様に使っているのは、少し寂しい『食』に関しては、年齢と共に誰でもが保守化すると言われているが山やクライミングの現場では、少し冒険してみるのが楽しいと思う。 先ずは『レ−ション・パック』の中身を、少し替えてみよう。 色々な味と、内容が楽しめると精神的にも楽しい筈だ。山は楽しんでこそ、食べる事も楽しみの重要な要素なのだから。 加熱処理の必要が無く、いつでも簡単な手順・動作で短時間で摂取できる『食品』これが、一般的にイメ− ジされる『行動食』だ。そういった必要要素を満たしていて、ある程度の食味・美味さを期待すると、かなり 個人的な、食生活の習慣とか嗜好が大切なので、誰にでも喜べると言う『パック』を製作するのは困難だ。 自分の消費する予定の『行動食/レ−ションパック』は、基本的に自分で作るのが良いのは、そういった 理由だ。『木の実/乾燥ナッツ類』は、満腹感を求めると重量的な必要要素を満たせない種類の食品だが 栄養価や保存性などの長期に渡る、使用に耐える利点や携帯性の良さからも、私個人は長年『行動食』 のパックには、必ず取り入れている。一種類で1パックとせずに、数種類を組み合わせて食味に変化を持たせるのが好みだ。昔は購入する事が難しかった『ラズベ−リ』も、最近では輸入品に良い物が選べる。 乾燥した果実類や、木の実を食品として利用するのには幾つもの利点がある。まず重量的な問題と、携帯時の煩わしさが少なく、微細な残りも無駄なく使える点が良い。日本では、あまり調理にドライ・フル−ツやナッツ類を使わないが、時間と燃料の節約で長時間の調理に制約がある山でも、中華や民族系の料理を応用・工夫して、かなり美味しい料理を味わえる事も多い。特に、甘味料として使うのにも適しているので、日常生活の中で、そういった料理を試しておくのも大切だ。鳩などの『帰巣本能』を、酔うと涸沢の私のテントの中で半ば真実の様に語っていた、故・長谷川氏もアルプス三大北壁での工夫した『レ−ション・パック』の中に、木の実を加えた食品を作って利用していた。忍者食や戦国時代の兵糧食の中にも『粟やヒエに混じって胡麻』や、山中で収穫した野生種の木の実が、古くから利用されている。 |
昭和の時代の登山者やソロ・クライミングにも傾倒していた、若者にも強い影響を残した『孤高の登山者/加藤文太郎』の唯一の、著書として知られている本よりも今では、新田次郎著の『孤高の人』の方が、有名になってしまったが、昭和初期に活躍していた『加藤文太郎』が山での活動中に、常食していた『甘納豆と小魚のニボシ』を真似た人は、きっと多いと思う。組み合わせとしては、かなり古いと感じる人が多いと思うが、加藤文太郎が厳しい山行で頻繁に使用していた、これらの純・日本的な携帯性に優れた、食品には現在の栄養学から考えても、優れていた点は存在している。そして、何より保存性と携行するのに便利な食品を『行動食』として利用している。 『甘納豆』を、小さな『アルコ−ル・コンロ』の火の上で、クッカ-(コッヘル)に雪を溶かした水に入れて、簡単な食事とするなど、当時としても理に適った冬山でのスタイルを確立していた。 今でこそ、バックパッカ-の一部に『軽量化・目的』で、注目を集め出している軽量・小型の『アルコ−ル・コンロ』を愛用していた辺りにも、当時は異端視されていた『単独登山/厳冬期の単独・行動』で、過激な行動と人間離れした活動範囲の記録を残している『加藤文太郎』の、食品利用には現在でも情熱と工夫に関して、学ぶ事は多い。 最近の『行動食/レ−ション・パック』として、利用者が急激に増えている『食品』の主流は、以前名の様な古典的な日本食の範疇に入る『御菓子や、御握り・弁当とは違う、アミノ・バ-やゼリ-系に代表される、コンパクトな保存袋やケ−スに入った、使い易い『各種・栄養を付加』した、科学的・栄養学的に優れた携行食品が中心で、単一の『通常・調理食品』のみを、利用するという事は少なくなっている。 それでも、バナナやコンビニの『御握り』を毎回、使っていると言うクライマ-は意外と多いが。 |