Bolts&hangers
これらの安全性を可能な限りのテクノロジ−と、一種の破壊行為で『確保』して『高難度』のグレイドのみを過度に追求した結果、クラックの横に平然と『ボルト』を打ち、クライミングに秘められていた、本質を見失ってしまったのかも知れない。
市販品として『フリ−クライミング』での、積極的な確保使用に耐えれる『ハンガ−・ボルト』が、知られ出したのは、意外な程に最近の事だ。1983年・頃から日本各地の開拓岩場では、欧州・アメリカの岩場で、体験を積み、実際の『ボルト』の使用に触れて、工業製品を改造したり、欧州モデルを見本にハンガ−も含めて『ボルト』自体も自作する、少数のクライマ−が現れたが、後に自作タイプ・工業規格のボルト類の代用品も含めて、強度面の不足や構造上の危険から、それらの当時は新しく『安全性が向上』したと思われていたボルトは、基本的な『強度』に、関して問題化して行き、制作者・使用者も、問題を認める場合が増加していた。

そういった時代に、要求されていた『クライミング用』として、安心して使用できる『専用用具』のハンガ−・ボルトが情報として、広く知られ出したのも1985年から翌年の86年で、クライミング雑誌に世界中のボルト・ル−トの写真が登場してから、遅れての紹介で専用ボルトの必要性が今ほど、多くのクライマ−に理解され、必要とされてはいなかったので『ハンガ−』の、扱い方やボルト設置の為の技術にも、混乱が生じた期間が生まれた。
クライミングの歴史の中で、世界で最初に『ボルト』を使用したのは、フランス・モンブラン山群であった。
初期の使用目的は『フリ−クライミング』での、突破が限界だと思われていた、箇所での直接的なエイド・クライミングで使われたが、現在では『エイド・クライム』の為の用具として理解・使用されている、ボルト類よりも完全に
『フリ−クライミング』での、墜落を止める確保(プロテクション・ギア)用具として、多くのクライマ−が使用している(下・図)は、1960年代に日本で知られていた、当時の各国・各種ボルト類の説明で「ハンガ−」の使用が始まっていた事が理解できて、面白い。
『ドウェル・リベット』も含めてアメリカで使われ始めた「ボルト類」は、初期からボルト本体とカラビナを取り付ける『ハンガ−』が、分かれた分離タイプから使用が始まっていたようだ。

工業用・建築用の各種ボルトの中で船舶建造と航空機・関係の、接合リベットやボルト類の開発や種類が、豊富だったアメリカの当時の恵まれた時代背景と、欧州から移民として移住してアメリカでのクライミングを続けたクライマ−は、工業的・技術の発展に後押しされて次々に岩壁で使う、各種『用具』を考案しては、実際の岩壁で使い、実験的な方法で得られたアィディアを更に、次ぎの『用具』に付け加えて、新しいタイプの『ボルト』を造り出した。
(右・写真)一見するとスライダ−・タイプのメカニカル・チヨックと
見紛う形状だが、実際はドリルで開けた穴に差し込んで使用す
る『ボルトに類する用具』論理的な面から、少し抵抗感を抱く人
が出ても、当然。
こんな用具があれば便利だとか、使えるならばの発想は技術の
向上と言った基本的なスポ−ツ意識やル−ル面での制約を超越
したテクノロジ−偏重の表れかもしれない。

在れば、便利で使いたがるのがクライマ−の性(サガ)

『クライムテック/リム−バブル・ボルト』
回収・撤去が簡単に行なえるボルト代わりの用具。私は買わない
『リングボルト』に、代表される日本国内の岩場
で、大量に使用され現在も、かなりの数量が各地の、小さな『岩場にも残置』されている「ボルト」類の、多くは金属の腐食も含めて、耐用年数が過ぎた物も多くなって来た。

この種の古くて『錆・腐食』した、金属塊を忌み嫌い、片っ端から『引き抜き』回収を行なうのを
自らの、使命とでも感じているのか、かなり強引
な活動を人知れず、続けているクライマ−らしき
人物も現れている。
諸端・切っ掛けはロ−カル・ボルダ−で長年
行なわれて来た『トップ・ロ−プ・ボルダリング』
での、論理間の相違・意見の違いらしい。
クライミングの冒険製・云々、以前の『不可能の抹殺』を拒否したボルト不使用・論が、もし基本理念ならば・・・
そういった『根本的なクライミングとボルト使用』とは、少しばかり話しの筋道も、論理的な行動とも合致しない、最近の『ボルト拒否・不使用論争』には、少し整理が必要かもしれない。クライマ−の数だけ、考え方も、行動規範、モラルもスタイルが違うと、言ってしまえば・・・少なくとも、『ボルトの乱用・無秩序な使用』を、どのライン・場合に適用して、自制するのか?問題・提起は成されているが、真摯な意見交換なり論争・話し合いは、少ない。
『チヨックからロック・ピトン』自然な方向性・論理感は
現在の『フリ−クライミング現場』では、通用しない。

ラッペル・ボルトでライン整備・リハ−サルを繰り返して
『ル−トを造り出す』その、過程は問題外であり確保支点
に使用される『ボルト設置』の、施工箇所の問題もクリップ
状態の適正位置か、安全な墜落を保障するかの、2点のみが、最も重要視される。
クラック横の『残置ボルト』適正かどうか?
『ボルト・キット』を、携帯せずに挑戦する「課題」
そういった、ある種の『精神的な葛藤と不安を、超えた』クライミング
には、一定の評価が与えられている。

探せば。考えれば『課題も挑戦・対象』も意外と豊富なのが面白い。
『充電式ハンディ・タイプのハンマ−・ドリル』が、クライミングの現場で
実際に、何時頃から、使われ出したのか、誰が最初に使用して『ル−ト製作』を、行なったのかという確かな、記録を私は知らない。
情報としての『電動ドリル』の使用例を知ったのは、意外と古い。
実用的なクライミングで,使える、これらの『機械』は『ボッシュ』等の
海外製品から利用が始まった。

『ボルト・キット』を、持ち上げハンマ−を嫌と言うほど振り回し、ドリル
を回しながら、削り込む方式で長く、単調で面白味もなく、時として苦痛
な作業から、開放された『ハンマ−・ドリル』の利用は、一種・麻薬的な
快感を覚える。かっては20分から30分と、時間と労力が必要でキリ
(ドリル)の、破損も在り得た労働が、機械を使えば軽くドリルを岩に当
てて、スイッチ・トリガ−を引けば、2分もあれば簡単に、何の労苦も無
く、必要な『穴』が、開いてしまう。
『M・ピオラ本人』が、ル−トを開拓している現場を目撃する
チャンスに恵まれた。前夜に同じ『山小屋』で宿泊していて
翌日の『新しいル−ト』の、話題・情報を聞き及べたからだ。

ガンガン・ル−ト上の浮石を下部の氷河に、叩き落していた。
壁上から大声で『寄るなァ〜』とか、叫んでおりました。
私達は、運が良ければ「ピオラの初登」後、第2登も可能かも
と、目論んでいましたが時間的な制約や天候などの条件も重
なって、この時は「ピオラ」が以前に作っていた、左壁のみを
登って下山。

(右・写真)は『ミッシェル・ピオラ』パ−テイが、上部壁での
ル−ト開拓・作業中を写したときのもの。
ザックに「バッテリ−」を入れて、コ−ドを「ハンマ−・ドリル」の
本体と、繋いで実際にクライミングしながら、ボルトを設置。
下から、上への『基本形のクライミング』

俗に『フレンチスタイル』と、称してグレ−ド向上・目的での
クライミング・スタイルに関しての、制約を限りなく・無制限?
クライマ−側に、都合良く利用する風潮が、悪く言えば認知
普及している国で、アルパィンの世界でフリ−クライミングの
限界・領域と世界を、広げる行為に『最新・用具』を、持込なが
ら、基本の『スタイル』を死守している様で、示唆的ではある。
『ハンガ−タイプ』が、現在の様にクライマ−なら誰でも理解
し、普及する以前には『ボルト』と言えば、最も普及していた
国産の『リング・ボルト』と、金属版を重ねてアゴ部を形成した
俗に『RCC型』と、呼ばれた2種類の『ボルト』が、基本形。
これら、国産タイプの共通点は、ドリルで開けた『穴』にボルト
の主軸・先端方向から『穴』に、差込・反対側をハンマ−で
叩き込むと、ボルト先端部(または中心・軸)の、小さなクサビ
が打撃により、穴奥に当ってボルト本体を押し広げる機能で
穴の中で、固定される。この方式を『エキスパンション/拡張』
と呼んで、数多くの「ボルト」が、この拡張タイプを採用して作ら
れていた。
『リング・ボルト』は、このクサビがボルト本体の主軸を中心部
に割りいれる形式の『エキスパンション・タイプ』で、日本国内
の人工登攀(エイド・クライミング)で、最も頻繁に、かつ多用
されていて、現在の『フリ−クライミング・エリア/岩場・ル−ト』
でも、実際に目にする事も、気休め程度も含めてだが必要に
迫られて『プロテクション』として、利用しているので、知っている
人は多い。ただし、岩場・岩壁上に残された『打ち込まれた』物
の、頭部・一部しか確認していない人が多数で、打ち込まれる
前の『シヨップ展示品』を、実際に手にしていても岩場に残置さ
れている、内部を確認する機会を持つクライマ−は少ない。
『回転ロック・タイプのハンガ−・ボルト』ならば、設置者・意外でも緩んだボルト・ナットを締め直したり、ハンガ−・チエックの習慣で、無闇に危ない『ボルト』を簡単に使わないので、安全確保に関わる『注意・義務』への意識は高くなるが、打ち込んだ本人・設置者にしか、効き具合が判らない『リング・ボルト類』には、注意すべき部分が理解し難い。ピトンの様に、闇雲にハンマ−で叩いて『チエック』するのも、実は以前から多くのクライマ−が、行なって来た方法だが現実的に考えて、ボルト自体の強度から考えても、必要以上の『ハンマ−・チエック』は残置ボルトに無用な、痛み、強度低下を引き起こす恐れは大きい。

『溶接リング』の腐食や、ひび割れ程度を確認後に『軽いバウンド・テスト』程度に、控えておいた方が良いでしょう。落石や冬季の、雪崩(岩屑・雪崩)長期間の風雨・浸食により、ボルトの頭が『オジギ』状態になった、これらの『ボルト類』では、更に慎重な使用が前提。『ボルト本体』の、腐食によりボルト径の変化が起きている場合には、軽い衝撃でも、引き抜き方向へ「ボルト」は、抜け落ちてしまう。国産タイプの『エキスパンション・タイプ』
では、拡張している部分が、意外と狭くて腐食後の拡張性能は、確実に低下してしまう。
『ハンガ−・タイプ』工業用・建築機材では、かなり以前から『オ−ル・アンカ−・タイプ』や、主軸・中心に拡張用・心棒が入った同種の『ボルト』が普及していて、ナットをボルト本体に、締めこむ事により『ボルト本体・外側』を覆った一種の『チップ』が移動して、ボルト用の『穴・内部・径』よりも大きくなって、固定される『ハイテンション・タイプ』も様々な、タイプが利用されていた。

『ハンガ−』と『ボルト本体アンカ−』が、別々に分かれてパ−ツ形成されているタイプが、広くクライミングの現場で使用されている、代表格と言える。この種類・タイプの『ハンガ−・ボルト』を岩場で、実際に目にして、使用する機会も多い。『アンカ−』形状・タイプには、幾つもの種類が在って、(上・下の資料)を読むと、理解し易い『クライミング・ケ−ビング・キャニオニング』ジャンルで、汎用性の高い『専用品』として比較的、入手しやすい。日本では、初期の入荷時にフランスの『ペッツル』製品が紹介され、実際にシヨップで入手できたので他の異なるタイプが、利用されるようになったのが少し遅れた。現在では、一般的とも呼べる『アンカ-自体』が、専用のドリルとして使えて、先端部が以前のようなドリル形状とは違って、細かく岩肌を削り、掘削方向にズレも起こし難い、当時としては画期的な『ボルト』として、フリ−クライミング・ル−トでの『プロテクション&アンカ−』として、多くの使用者が生まれ出た。

『ドリル・ホルダ−/ジャンピング』の、後ろ(打撃面)を、片手で握って『ホルダ−』を先端のドリルの位置を可能な限り、動かさないように小まめに、数多く叩く。この作業の最中に、ボルト先端の穴に、詰まる岩粉を掃除すれば、円滑なドリリング作業となります。ある程度の、深さまでドリリングしたら、こまめにボルト(キリ/ドリル)を、一端・穴から抜いて、打撃面を軽くハンマ−で叩けば、用意に岩粉は取り除けます。
ドリリング・ハンマ−作業に、集中するあまり、この掃除を怠るとボルト『穴』の、掘削効率が一段と低下してしまうので、こまめに岩粉・・屑を取り除くのが一種の『コツ』です。
『軽合金ハンガ−は、意外と弱い』
国内、初期の入荷モデルの『ペッツル社ハンガ−・ボルト』には、二つの種類があって、一つはM8/ドリル径12mmと、M10/ドリル径14mmが、一般的に使われ始めた。記録・情報やテキスト的な、記述・紹介、説明文の中に、時々、表記されていた『M8』タイプのボルトを、=『8mm』と呼んだり、『M10』タイプを俗に
『10mm』と、表示する携行があって、実際には=『8mm/M8』に適合さす為に、岩に空ける「穴・径」は
12mm。 『M10』が同じく、実際のドリル径は14mm、この辺りの現場と文章・表記の差異を理解していない人達が、岩場でのボルト設置で重大で、実は致命的な間違いを起こしている、かも知れません?

『シヨップ』での、販売時にも混乱が生じていた時期があり、クライミングを一度も経験していない、休日の趣味はゴルフと盆栽とか、言っている店員さんが、事もなげに『違う径と、違うドリル&ボルト』を、気楽に販売している。そんな馬鹿なと思うような現実もあります。
基本の『ハンド・ドリリング/手打ちボルト設置』の、経験も無く、いきなり電動ドリルのスイッチを引いて、ル−トを開拓して、ボルトを打ちまくっていた・・・その、人たちの『ボルト設置・技術』にも、不安ですが、簡単に『ボルト』を、短時間に大量に、そして用意に設置・残置していく現実にも、実は恐い部分を、感じてしまいます。特に、ボルト先端部に『拡張チップ』が、付けられていて「エキスパンション・タイプ」として、機能するボルト類では、電動ドリルで空けた穴・奥が、円錐形に尖った「ドリル」の先端と、全く同じ形状に掘削されている訳ですから、V角度に削られた『奥』に、ボルトのチップが入っても、ボルト本体の全周が邪魔をして、チップはボルト内部に食い込まず、拡張が起きませんから『エキスパンション機能』が、働かず無意味となります。
いくら『ペッツル・カタログ』を、何度も眺めていても重要な『必要・情報』を、解読・理解していなければ全く意味を成しません。

『電動のハンマ−・ドリル』が、いくら高価で性能が良くても、こういった機能面で充分な理解と、使用方法を熟知していないクライマ−には、簡単に使える性能ゆえに、本人以外にも『危険』を与える現実が置き易く、機械と共に旧式ながらも『手打ちボルト・セット』も、最終的な『穴の成型・作業』では、必要です。

『ハンガ−・タイプ』の、ボルトでも『エキスパンション・タイプ』ならば、電動ドリルで空ける深さを、使用したい
『ボルト長さの2mm手前』程度で、掘削・作業を停止して、後の深さを面倒でも『ハンド・ドリル』使用で、穴・奥の成型を終了さすべきです。キリ(ドリル)形状の「ボルト」を、良く見て観察すれば理解できると思えます。

こういった、ある種の『面倒な作業』が不要なタイプで、電動ドリルの使用が基本・前提となるのが、工業製品の中では普及している『グリップ・/オ−ル・アンカ−・タイプ』です。
『ペッツル社ならば、ロング・ライフ』が、これに相当する代表的なボルトでしょう。私個人は、長くこの『ロング・ライフ』を、愛用・使用しています。このタイプでは、それほどドリルで掘削する『長さ』に神経質に、なる必要はありません。ある程度、目測・感でドリル作業をして、深過ぎる『穴』を空けてもボルト本体の岩での固定力に、影響は及びません。ただし、『穴・奥』が、深過ぎると水分の侵入や腐食の進行を早めるだけですから、適正なドリル径の使用と、深さを心がけるべきです。
『ボルト本体・中心にチップの役割を果たす『心棒』が、内蔵されていてボルトの挿入後に、この外側に出ている『チップ』の片側を、叩き込めば簡単に拡張・機能が働き「固定」されますから、比較的・設置は簡単です。また、このタイプのボルトに付属している『棒状チップ』は購入後に、少し固着させてやれば携帯時に、チップだけを紛失したり、ラッキング・カラビナに吊るしていて、チップを落とすという失敗も、ありません。