Crack Climbing Skills |
Crack Gear-1 |
チヨックの起源は、かなり古く最も基本形となるのは、19世紀の『冒険登山・クライミング』現場でのチヨック・スト−ン利用の確保手段や、手持ちの器具や装備をクラックや、フレ−ク形状の岩で単純に使用した辺りに初期のクライマ−の創意工夫や、インスピレ−ションを感じる。 金属で作られた『クライミング用具』が世界で最初に製作され、市販品としてクライマ−に利用されたのは諸説あるが、スコットランドのペックが製品化した、単純な円筒形・金属ブロックにスリングを通した物なのではと私は考えているが、同時期的に欧州では、硬質プラスチック製品で現在の、台形タイプに形が似通ったチヨックも製造・販売されていて、日本国内には金属製品の入荷・以前に、このタイプの軟質系のチヨックが僅かな期間だが出回っていた。当時は製品名・用具・名称にチヨックとは書れていず『ブロック・ハ−ケン』と表示されていたので、当時の『ハ−ケン(ピトン)』表記から受けるイメ−ジとも合間って、少し誤解を生じていた部分もある。 ペックの製造した、単純な形状の初期のチヨックは、主にボトミング効果を重視?した形状で、スリング取り付けで使用するタイプと共に1973年には、ワイヤ−付属のモデルも市販品として登場していた。 そのタイプの実物を当時、私は生産国・現地で購入して翌年には帰国後・六甲山の岩場から実際に使用していた。購入したのはフォ−ト・ウイリアムスの有名シヨップで、現地のレスキュ−・スク−ルやベンネベス周辺が活動拠点であった、クラブや救助隊(民間ボランティア組織)の所有する、共同・装備類の中にも、これらの用具は必ず含まれていたので、かなり早い時期から利用されていた用具だと思われる。 |
『ストッパ−狂』と称される、愛用者を差す名称は、一種の賞賛と敬意を込めた表現。1970〜80年代の カリフォルニア・クライマ−、特にヨセミテ渓谷での当時の限界的なクライミングで、難易度を飛躍的に押し上げ出したクライマ−集団の中でも、特に『フェア−なスタイル』『ピュアな理想』を具現化している、少数のフリ−クライマ−にのみ通じる『愛称』残念ながら、日本国内で存在していた痕跡は唯一・一人以外・見受けられないそうだ。 |
現代のフリ−クライミングを考える時に、何を用具で連想するか? この部分で、クライマ−本人の年齢が端的に、現れたり意識面 でのクライミングに関する、理想や現在の意識が見られるかも 知れない。ハンガ−ボルトにプラスチック・ホ−ルド(室内壁)と 答える層が、圧倒的に多いのは承知で。 私ならば、迷わずにチヨックとフラットソ−ル・シュ−ズと、応えてしまう。 特に『チヨック』に関しては、画期的な用具であると共にクライミングの本質的なスタイルや、思想を大きく変化させた、もしくは原初的なクライミングへ、揺り戻す、きっかけとなった衝撃的な用具として筆頭に表示すべき用具だ。 日本国内に『フリ−クライミング』の最初の概念・理念的な要素を 含めて、象徴的な「用具」として知られ出した頃のチヨックは、世界的に見れば、第三世代とでも呼べる単純なモデルから、改良が進みヨセミテを含めて、世界中の岩壁で実際に性能が証明され始めた、ある種・当時としては完成形とでも呼べる用具だった。 戦前の英国で、現在では伝説化された逸話としても知られる線路 沿いを歩きながら、拾った小石やマシ−ン・ナット(工業用・ナット) 等を人為的なチヨック・スト−ンとして、使用されたのが1930年代 それが1940年代には、主に金属製のマシ−ン・ナットの使用が 普及して、1950年代には現在のチヨックと同一の目的のクライミング・ギアとして更に発展・普及して、現在に続く流れが決定した。 |
最も初期の『クライミング・ギア』としての、金属製チヨックは単純な形状のものが多くて、主にロ−プスリング類を通して使用されるタイプが多かったが、すぐに強度的にも安心出来る、ワイヤ−接続タイプが生み出されて、チヨック使用時の強度面での、クライマ−の不安は払拭され出した。ワイヤ−を使用した事により、チヨック本体のカム効果を利用する、機能は減少さぜるを得なかったが、最大限の強度を得られる利点には替えられず、カム・チヨックとしての性能は、他の異なるタイプのチヨックへと要求が移行して、その後にワイヤ−付属でもカム効果を利用できるタイプも当然ながら、出現した。 |
単純なウエッジ形状から、更にクラック内での 密着度・固定力が強まる形状としてチヨックに カ−ブや窪みや、凹凸部を加えたタイプが製作 されて初期のワイヤ−・チヨック類の代表格で あった『ストッパ−』を抜いて、英国のワイルド カントリ−社はフレンズと共に、当時としては他の 似通った用具と比較しても、多くのクライマ−の 求めていた機能を有した、新しいストッパ−を製作 後に、このタイプがワイヤ−・ストッパ−の基本形 として各社が追随する。 三世代目と呼んで差し支えない?NEWタイプは DMM社が、これまでのストッパ−・タイプに加え られた曲面を更に、より複雑なクラック形状にも 適合出来る様に、細部に工夫を凝らした製品で 現在では、このタイプを指してストッパ−と呼ぶほど に愛用者が多い普及品。 現在では形状の違いのみならず『チヨック』の材質 による固定力の違いにより、岩質やクライミングの スタイルで、使い分ける事も、可能だ。 |
レスキュ−・ワ−クでの使用にも適した、高強度のカラビナ類を提供していた『HB』も、現在では各種ギア類の新しい生産を止めたと伝え聞く。幾分やぼったい感じを受ける、クライミング・ギア類を開発するメ−カ−だったが、『オフセット・ナッツ』や極少クラックでの密着度が高い、軟鋼(ブラス)ナッツ等の、ユニ−クなチヨックを出していたメ−カ−だったので、それらのギア類が市販品から消えるとしたら、惜しまれる。 細いクラック対応の、比較的・材質の柔らかく、岩肌に食い込むタイプのスモ−ル・チヨックは(旧)シュィナ−ドが最も早い時期から、生産・販売。一般的に知られているのは『ブラス・ナッツ』として市販されていた物だが、 似通ったタイプは、英国製や仏製にも幾つか存在していて、僅かな期間だったが独サレワ社からも販売されていたが、利用者は多くなく使用する岩場・ル−トが少ないと言うよりも、ボルト使用への急速な意識の変換が欧米のクライミング・クライマ−環境と比較して、日本では、使用用具へのステップ・段階が急激で、使用者が増える以前に必要性が失われて、忘れられた用具となってしまった。 |
『ラプラウド・ネスティング・ウエッジ』重ね合わせタイプの原形モデル。 数多くのワイヤ−ド・ストッパ−類と同じく、2本の主軸ワイヤ−に6枚のウエッジ状の曲げられた プレ−トを、各個別にクラック・サイズに合わせて使用できるシステムを採用した、ユニ−クなチヨック。1本で8mm〜28mmまでの、クラック・サイズに使えるアイデイアを採用していた。 |
クライミングで想定される『予測強度』の、問題は現在では充分にクライマ−側の要求に応えているが。各社から製作・販売されている『ワイヤ−付きチヨック』類に求められる、性能・課題は軽量化と共に柔軟性だ。 |
より確実にクラック内部で『ストッパ−・タイプのチヨック』が安定して固定されるように、各社は様々なデザィン状の工夫や材質の変更を続けて来た。現在では、大きく二つの材質的な違いによる、種類をクライマ−は選択できる、一つは比較的・柔らかい金属性質を生かした、より岩との接触面が少ない力で摩擦力が効かせられるフリ−クライミング向きのタイプと、やや硬めの金属を使用して、形状も大きな曲面を持たず、体重を直接・加重するようなエイド・クライミング時にも、比較的・岩への食い込みが浅く、回収が容易なタイプで、どちらを選択するかは使用者・側(クライマ−)の要求する機能・性能(目的)次第。一般的にはクラックでのフリ−クライミング重視ならば、DMMの『ウォ−ル・ナッツ』エイド・クライミング向きには、汎用性の高いブラック・ダイヤモンドの『ストッパ−』が、多くの使用者の意見として推薦されている。進化系の新しいタイプの変形ウエッジ・チヨック(ストッパ−)として、近年・評価が高まりつつあるのが、メトリウスの『カ−ブド・ナッツ』と小型化された同じくメトリウスから発売されている『アストロ・ナツツ』で、こちらは(旧)シュィナ−ド社が生み出した、初期のブラス・ナッツと同じ様に、軟らかめの材質が特徴のシリコン・ブロンズ(銅合金)を素材として使用してクラックでの高い、安定性を確保している。『カ−ブド・ナッツ』もアストロ・ナツツと同じく、2方向・断面にカ−ブが特徴で、岩肌と接する3点が安定性を生み出し、コンパクト化された形状は汎用性を高めていて、他の単純なストッパ−と比較すると、フレア−ド・クラックや、浅いクラックでの安定度が優れていると思われる。購入に当っては可能ならばメ−カ−・パックで販売されている『フルセット』での入手が、御薦め。1本ずつの購入では普及品モデルしか使えないが『セット購入』すると、ヘッド部が識別しやすいカラ−アナダイズ加工された製品が使えるからだ。 |
日本国内には入荷しなかったが(下・写真)のイタリア・グリベルの、大型『ストッパ−』は私の長年の 愛用・使用ギアの一つ。左端の(シュィナ−ド・ストッパ−)と比較すると、サイズの大きさが理解出来るヘキセントリックよりも軽く、利用範囲の広さから私は、このタイプを使用する機会が多い。 |
使用する場合には、やはりヘッド部分が、サイズ別に色分けされている方が断然・使い易い。 カ−ブ部分に、刻み目が加えられている市販品が出回る、10年以上前から私達は改造を施していた |
(下・写真)これも日本国内には入荷・販売されなかった種類かもしれない。フランス・シモン社の花崗岩にマッチした、カ−ブド・ストッパ−。ワイヤ−部分が他社よりも短く、携帯性が良い。 |
(下・写真)ブラス・ナッツと同じ様に、非常に薄く作られているスモ−ル・チヨックで、材質もブラスと同程度の軟らかさで食い込みが良くて、非常に高い安定性を有していたが、回収はサイズの小ささも、あって困難。 |
(下・写真)右端のノ−マル・タイプのサイズと比較すれば、スモ−ル・タイプのサイズが理解出来る。 極少サイズは、現在では殆ど市販されていない。残置の危険性が非常に高く、毎回・回収には苦労させられて、どうしても回収できなかった愛用品の記憶が残っている。 『Steel Nuts/スチ−ル・ナッツ』極少ナッツの使用が、主にエイドクライミングだと考えているのは日本 での使用者・クライマ−が多く、この極端にサイズが小さな『ストッパ−・タイプ』のチヨックで、厳しいフリ− の課題に挑戦するには、国内の岩場の状況や岩質が向かないと言う意見は多い。 それでも、可能性は秘められていて残った『課題』は予想よりも多いのではないかと私は考えている。 クラックの中で、岩肌との設置面積が僅かな『マイクロ・ナッツ』で、果して大きな墜落衝撃が支えられるのか、疑問を感じるし使用するには勇気が必要だ。ブラス(真鍮)製のヘッドはスチ−ル製に比べて、墜落時の衝撃でワイヤ−との接続部が破断する危険性は高い。 |
2006年DMM社の『ウォ−ル・ナッツ』 にも、目的のクラック・サイズが素早く選べる 色分けモデルが登場した。 効き具合の良さで定評があり、実際に使用者 からの評価も高いチヨックとして利用者も多く 私も、長年の愛用者。 これまでのサイズ構成に、更に小型で薄型も 加わり、使い勝手が向上したと思う。 ヘッド部分を色分けする改良?は、現在では 標準仕様と呼んでも、差し支えない事なのだが 全てのメ−カ−が採用している訳ではない。 (旧)シュィナ−ド=現在ブラック・ダイヤモンド (BD)のストッパ−類が全てチヨック類にカラ− 識別を施したのも最近になってからだ。 個人の工夫としては、ヘッド部分と共にラック時 にハ−ネス側に近いワイヤ-部分にも自分で テ−プ類を色分けして巻くなどの工夫を施して 使い易く工夫しているクライマ−も多い。 |
:現在のクライミングでは、アプロ−チの労苦や重量的な制約を強く、受けない限り必ずしも単純なチヨック類を使用しなければ、成らないと言う理由や制約は生じないので、機械式の簡単に使えるカムの使用頻度が多いのが事実だが、ワイヤ−・チヨック類は時代が変化して、クライミング・スタイルが移り変わっても必ず、これからも使われ続けていくだろう『プロテクション・ギア』の一つだろう。 |
『基本形』は、ほぼ完成の域に達していると考えられている『ストッパ−・タイプ』のチヨックだが、材質面 とデザィン面での工夫・改良は、今現在も続いていて、カ−ブ面に、より安定度を高める機能を加えたくて刻みを入れるなどの簡単な工夫は、かなり古くから取り入れられている。 |
『カンプのポロ・ナッツ』は、現在では唯一・主軸ワイヤ−に、二つの異なるサイズのチヨックを取り付けた 製品で、殆ど岩場で見かけることは無いが、以前から気になっていたモデルだ。 |
単純な『台形』の金属の塊から、両側面にカ−ブを加えた、現代的な『ストッパ−』に変化するまでの期間は意外に短いが、ある種の目的では原形タイプの『台形モデル』にも、利点が生じる。 特に極端に細いクラックでの使用では、少し古いと思われているシンプルな形状のストッパ−が有効な場合があって、幾つかのモデルが各社から、まだ製造・販売されている。スタンダ−ド・モデルは(旧)シュィナ−ドで、その後に最も使い易いと評価を得ている、DMMの『ウォ−ル・ナッツ』が続くが『フレンズ』の製造元である、ワイルド・カントリ−から発売されている同型タイプにも、愛用者は多い。 入荷量が少ないのか、販売店で見かける事が少ないような気がする?イタリア・カンプ社の製品にも中々・良さそうに感じるチヨック類が多く、トライカム等の様な本家からの入荷品が途絶えている、優良ギアの提供メ−カ−としても、もう少し宣伝・活動や広報に力を入れたら良いのにと勝手に応援。 |
基本形の『台形』その後の改良タイプの『カ−ブド・デザイン』を使用して来た人達には、中々・文章では理解 できない完全な『カム効果を有したストッパ−』原理的には非常に単純で、主軸ワイヤ−も他のストッパ−類 と異なり1本タイプで、抵抗が少なくて柔軟な為、通常タイプよりも使用範囲・角度の自由度は高い。 日本国内で市販されたのか、どうかは不明だが80年代から私は愛用して来た。 サイズ構成が少ない点が問題だが、初期の一見して「プロト・タイプ」と見えた製品から、2代目は可動部も 改良されて、完成度は高まっていて同時代の『ロ−・システム』の無骨さ、から見比べると洗練されていて 形状もシンプルで、個人的には好きな『ストッパ−』の一つだった。 |
『ワイヤ−・ストッパ−』も、フリ−クライミングだけでの使用・以外に積極的な『エイド・クライミング』で使用していると、損傷は激しい。回収の為に、どうしてもハンマ−を使ったり、強引な方法を使用するからだ あまり損傷・磨耗している物は、フリ−クライミングでは使えなくなる消耗品である。 |
Advanced Rockcraft(Royal Robbins)を辞書片手に岩場で解読?しながら学習した。 金属製品の本物の『チヨック』を使うまでに、スリング・ノットや硬質樹脂製の『チヨック』や、マシ−ン・ナットも、それに類する工業製品も使っていた時期が、私にはある。 |
1979年「阪急・六甲駅」近くのボロ・アパ−トにて撮影 |
六甲山『仁川渓谷の岩場・真珠岩』 |
『シュィナ−ド・オリジナルのストッパ−』は、1988年に自社製品の『ストッパ−』の説明に、第5世代と解説している。それほど、細かな改良・改善が加えられた『ストッパ−』は2007年・現在でも、この種のトランスバ−ス・テ−パ−・ストッパ−の代名詞として愛用者は多い。 『シュィナ−ド・オリジナル』の『ストッパ−』は、素材金属に『アルミ合金6061−T6』が使われていて、初期のNo1〜No3には、クラック内部での接地面を広く、取る為にカ−ブは付けられていず、素材も更に強度が優れる『7075−T6アルミ合金』を使用している。この種の『チヨック類』で、サイズ構成で基本・素材を変えて、より小型化・軽量化を推し進めたのは『シュィナ−ド社』の、安全管理・体制と製造工程での良心的な品質・確保に対する情熱からだ。 使用されている『ワイヤ−』は、電気メッキされていて初期のオリジナル物から、現在は少し径も細くなったかも知れない。所期の『ワイヤ−無しル−ス・タイプ』の使用者は減少しているが、5・5mmの『ケプラ−・コ−ド』を通して使うための専用穴は、最近の物にも付けられている。 |
小さな『スチ−ル・ナッツ』の製造方法は、スチ−ルのパウダ−(粉)を、粒子が溶け合ってチヨック形状に固定化するまでの高圧力のプレスで成型して、ヘッドを作成。ヘッド部を製作してから、精密な作業で穴を空けてからワイヤ−を通してからハンダづけして完成という他のチヨック(ナッツ)類とは異なる製造過程で製造されているらしい。その為に、ガッチリとクラックに食い込んだ『スチ−ル・ナッツ』を回収するにはワイヤ−を乱暴に引っ張るのはヘッドとワイヤ−の固着部分が壊れる危険性が、あるので注意。 |
『チヨック』が使用できる場所と言うのは、意外と多い。国内外のル−トで、基本的かつ古典的な『チヨック』のみを、プロテクションとして使用して完登できたル−トの、想い出は楽しく充実感と達成感は大きい。 |
激しい衝撃を受けた『チョック類』は、ワイヤ-部分にも見えない強度低下が発生している可能性はあるので無理な回収作業で痛んでしまった『ワイヤ−』と、共に次ぎの使用は諦めた方が良い場合もある。目に見える『損傷』とは別の『見えない将来の危険』と言う、部分にも注意しなければならない。 |