(上・左)写真の『リング・ボルト』と呼ばれて日本国内で最も、大量に・そして広範囲な岩場で使用されて来たボルトとして、現在でも「普及品」として販売されている。私達が最初に、岩場で見た頃には『ボルト』 の事を『埋め込みボルト』と呼んでいて、現在の『リングボルト』タイプには、幾つかの種類が販売・使用されていた。その中にはカラビナを、かける為の溶接リングが2本のタイプも、あって『改良U型』と、呼ばれていた。ごく少数の海外からの入荷品の中には『鋳造タイプ』や、『埋め込み部が円柱状ではなく、四角形』タイプの物も見たが、それらに適合する『キリ=ドリル類』が、登山用具の販売店に置いてあるのを、私は見た記憶が無い。 私達が本格的に『クライミング用具』を、手にした1960年代の後半には、この『ボルト』類は国産品での流通が基本となり、海外からの製品「用具」は、かなり特殊な物として、実際の日本国内で使用する機会は、余程・変わった、そして金銭的に余裕があるクライマ−にしか無かった筈だ。 国内での流通・販売では最も初期に『雄ネジと雌ネジのボルト形式』も、存在していたと聞く。歴史的に見れば現代の『フリ−クライミングの発展に貢献』した、信頼出来る強度と使い易さを、兼ね備えた『近代タイプ・ボルト』と、初期タイプの市販品は構造状では、かなり似通った『物』だった。 その後に、日本オリジナル・タイプの『ボルト』が工業製品として、単価も含めて比較的、誰にでも購入できて使える範囲の『用具』として、安全基準と呼べる感覚や最終的な『安全』とは、別の壁の中での前進『人工登攀での使用を前提』として、単一・機能に特化した『用具』として、普及したのはクライマ−自身の欲求からだった。 国内での『人工登攀=エイド・クライミング』の、急激で一方向性の視線と、普及に伴なって他国のクライミング。特に欧州での『確保・用具』としての、ボルトの性質・特製の改良と発展の流れとは、逆行して日本では、単純に前進(エイド)クライミング用具としての、『ボルト類』の、改良と発展が進み、使用者が激増し。 |
エイド・クライミングでの単純な使用目的に、適合した我国で広く普及した『リング付属タイプ=リング・ボルト』は、異常な数量が出回っている。しかし、『リング・ボルト』は、ごく初期の使用から常識として強度には問題があり、機能面とは別に『安全性』に疑問を、持っていた人達は意外に多かった。私も、その一人だと思う。衝撃の方向が、主軸に向って延長線上となるオ−バ−・ハングでのル−フ部に、下から逆さ使用する場合などに、基本的には使用を躊躇う気持ちが、強く働いていた。 その為、後に『RCC型』と呼ばれた、ボルトの主軸と離れた『アゴ』を持ったタイプも、より強度が必要な場所やハングの突破で、積極的に使用されるようになって来た。 |
1972年の穂高岳『屏風岩・東壁ディレッテイシマ・ル−ト』 この頃には、こういったタイプの連続するハングの突破で、ボルト の使用・特に乱用は、何らクライマ−の疑問や後悔の対象として 見られていなかった。使わなければ、登れない。 いたって簡単な論理が、先行していたから。 市販品・以前から日本国内では、自作ボルトや改造タイプは数多く 流通?使用されていて。国内初の『ボルト使用の記録』で使われた ボルトも確か、海外製品ではなく『自作ボルト』が使用されている。 |
1960年代には、現代の『フリ−クライミング』使用で一般的な、ボルトそのものがジャンピング(ドリル)として機能するペッツル・タイプの『ゴロ』が、仏・独では使用されていた。今で言う『プレ−ト・ハンガ−・タイプ』のボルトであり、日本タイプの物は、初期から積極的なエイド・クライミング用とクライマ−は認識していた。この辺りにも、クライミング用具、特に『ボルト』に関しての利用範囲や、使用目的・論理などでの基本的な違いが、用具の登場時期から日本と欧州では、違っていたと考えられる。 |
(右・写真)初期の工業的・生産品の『ボルト』は、日本ではリング・ボルトが一般的 だったが、仏・独では設置する為のドリルの径が、違っていた事と共に『ボルト』自体 の構造も違っていた。材質面も違い岩に空けた『穴』の中で、ボルトが叩き込まれて 四角い埋め込み部分が、円柱状の『穴』の中で変形して拡張(膨らむ)固定される 構造は、日本で普及した『クサビがボルト自体を、開いて固定』される、システムとは 違う方式。欧州の『タイプ』は少し、小型で構造上、最も弱い主軸の引き抜き角度に 耐えやすく、アゴ部が付いたものが基本であった。日本製の『リング・ボルト・タイプ』 は、ごく一部の大きなリングが、下降用として付いた『物』以外は、市販品としては見受 けられなかった。 |
『最新のケミカル・アンカ−』の、初期・原型タイプと考えられる物は、合成接着剤や 樹脂系・素材などが存在していなかった時代の、垂直方向に埋め込まれた鉄杭など で、使われていたと言う『原初的な方法』溶かした、鉛を岩盤に掘削した穴に流し込み 鉄杭を固定さす、そういった方法での設置方法も行われていた。 コンクリ−トや高強度・接着剤が存在していなかった、時代に様々な方法が試されて いたのだと思われる。 私も、過去にスイスの山で実際に『このタイプの設置物』を、実際に見た記憶がある。 |
1本の『ピトンも使用せず』初登されたと言われている『1ルンゼを眼下』に、ボルト・ピトン連打の、まさに鉄の路『岩壁に引かれたライン』から、外れる事無く、ダイレクト・エイド・クライミングの見本だった『東壁』リング・ボルトが一般的に使用されていて、たまに確保地点に『RCC型』が、残されている。そういったタイプのル−トが増加していた時代。技術差も、打ち込まれた『ボルト』に端的に、現れていた。 既成ル−ト、特にエイド主体のル−トでは過去30年間で、運良くボルトの打ち足し経験は、こぐ稀でボルト以外の用具での突破・通過が可能だった。冬季には、条件が違っていて『残置ボルト』が、何らかの理由で発見できずに無駄な時間と危険を、避ける目的。そしてル−トの完登を最大の『理由として』新たに、リング・ボルトの使用や、バット・フック利用の為の、ドリリングでの『穴開け作業』は、僅かながら体験していて。ル−トの開拓での使用は、記憶に留められない数量。救助『現場』での使用本数も多い。 |
この種の『基本的に強度が弱い』それは、現代的な『ハンガ−・プレ−ト・タイプ』と、比較してだろうが。そういった新しいタイプが、現実的に使用されていなかった時代での『現場・体験』も、無く、救助現場での利用や自分でル−ト開拓の実践経験も無い人達が、フリ−クライミング思潮・思想の主張だけで、過去からの歴史も全て無視して、この種類の『用具』は不要・無用。そして『強度・云々』で、使えないと断言するのは、少しばかり問題を感じる。特に、電動ドリル類でしか、実際に岩場での『ボルト設置』の、体験が無いようなクライマ−に、短絡的な意見で『ボルト不要論』を、矛盾して主張されるのも少しばかり、反感を感じてしまう。 使わないと言う『意見・主張』が、実際の緊急現場や人の、命を救う可能性がある『レスキュ−現場』で、使えないのは無意味だ。使える為には、実際の使用体験と技術を持っていなければ、意味を成さないのは自明の理。(使わない、使うことを拒否・否定するのと・使えないとは別の問題) |
日本国内で、最も普及している二種類の『ボルト』 |
各種・フックとラ−プを積極的に使用して、ボルトの利用を極力避けて開拓したル−ト 個人的に足繁く通っていた穂高岳の(某岩場)記録は公表せず、知る者は殆ど、いない限られた装備の途中・補給は皆無。春から夏を経て、初冠雪を見るまでの山暮らし 1本のボルトさえも、貴重で節約する為に技術的な課題に取り組むチャンスが増えた |
(上・種類)説明 現在の普及品 |
(1) ジャンピング・ホルダ−=単にホルダ−とも呼ばれる。 70年代から80年代・後半時期までは数社からグリップ形状を含めて、幾つかのタイプの違う物が 市販されていたが2000年・現在では、このタイプのホルダ−しか入手出来ない。手の小さな人に はグリップの膨らみが使い難く、リブ状の突起部が長時間のドリリング時に掌を痛めると言う欠点は カッタ−・ナイフ等で、簡単にゴムを削れるので自分の手に馴染むように加工するのは簡単。 (ハンマ−で打ち付ける、打撃部は材質が柔らかく最も消耗する。衝撃を吸収し、手首や肘に加わる過度 の衝撃・単調な作業で起こる障害を防ぐ意味では、良いのだがボルトを設置するための用具としての機能 だけを考えれば、打撃力が分散してしまい、用具としての耐久性能も悪くて非効率このうえない。 買い替え頻度を高めたいと望む、メ−カ−の思いから変化・改良が期待出来ないクライミング用具の筆頭。 (2) キリ=ドリル 初期には鉛筆なみに長い製品も市販されていたが、実際の岩場・現場ではドリリング作業中に折れ る確立が高く、徐々に今現在の最も『短いサイズ』に落ち着いた。 この『キリ』の耐久性能や実際のドリリング作業時の効率度は、使用する岩質に大きく左右される一般的 な国内のクライミング環境では極端に硬い、渓流・渓谷の岩ではリング・ボルト1本を設置するのに5本もの キリを必要としたと言う記録が残っていて、クライミング記録にも同様に1本のボルト設置に数本のキリを 交換したと言う記述は多い。関西でならば七面山・南壁や大台ケ原・周辺での初期の開拓・記録にも、例 を見る事ができる。実際に私も岩場でのル−ト開拓実施・時に似たような経験は多くて、沢ではキリの破損 が同一の『穴開け作業』場所で4本と言う体験もあった。今時の電動ドリル使用者の快適さとは本質的に 違う世界だ。たまに『電動ドリルでも、手打ちでも同じ』等と言う、記述を読むと・・・ この弱すぎる『キリ』の問題を、解決したのはメ−カ−では無くて『宮崎登攀倶楽部』メンバ− 市販品の問題点を、徹底的に改良して『問題のキリ』自体も超硬タイプを初めて、世に出した。 私も、当時・懇意にしていた宮崎メンバ−から直に譲って頂いて使用していた一人だが、大量に出回る 種類の用具ではなかったので、正当な評価を受ける事も無く、製品として市販される条件も揃わず知る 者も、僅かなレアモノ・伝説の『クライミング・ギア』として情報のみが世に出た。 |
(3) エゼクタ−=キリ抜き取り用具 ジャンピング・ホルダ−先端部に取り付けた『キリ=ドリル』が打撃によって、ホルダ−に固着されて キリが抜けなくなった時に、このエゼクタ−と呼ばれる小さな用具をホルダー部に空けられた貫通穴 にハンマ−で打ち込んで、キリを押し出して交換を可能とする。この小さな用具も、材質的に大きな 問題が、あり材質的に機能に比例しない柔らかさなので、本来の機能目的に合致していない。 しかし、これを持っていないと実際の現場では「キリ」の交換が行えないので、忘れてはならない 付属品として、細紐などでホルダ−本体と共に、つないで携帯する習慣が必要。 この用具だけを別に、携帯していると探すのに苦労したり、いざ実際に必要な時に落したりと不便 かつ、トラブルの元となるので注意。 |
(4) RCC型ボルト=日本オリジナル・タイプ 原形は古いイタリアやフランスの鋳造ボルトと外観も機能も同じタイプで、一般に知られている情報 の『アゴ部』を持った、世界初のボルトと言う通説は明らかな間違い。挿入部こそ海外品は鋳造品 特有の四角形だったが、基本形状はRCC型の基本形と呼んで差し支えない。 実際に『現物』を、たった1個だが私は所有していて比較できる。 硬い岩質に、適正な作業で確実に打ち込まれると衝撃がボルトを変形さす材質なので、幾分かは衝撃 加重を吸収する。しかし、基本的には『アゴ部』が宣伝されていた強度の増幅機能を格段に向上させる 訳ではなくて、あくまで『リング・ボルト』に比べて強度が大きいと理解すべきだ。 70年代から、このRCC型ボルトのカラビナ・ホ−ル(穴部)に直接・指を入れてのクライミングでスリップ 時や、不意の加重で『指の骨折』『裂傷』事故の報告は多数。私も実際の岩場で、その現場事例を目撃 した経験を持っている。また、ボルトの原理を理解していない無知なクライマ−が、本場岩場でピトン類と 混同してか『ハ−ケン(ピトン)チエック』と称して、これらのボルト類をハンマ−で叩いている現場も多数 目撃していて、用具に関しての知識の欠如は、他のクライマ−にも危害・危険なのだと痛感。 さすがに、現在ではハンガ−・ボルト類をハンマ−・チエックで叩く者は、いないと思いたかったが、やはり どの世代・時代にも間違いや、勘違いを起こすクライマ−は存在していた。 過度の恐怖心や、盲目的な偏った知識と思い込み・・・・心理的な要因も存在しているようだ。 |
(5) リング・ボルト 以前には『リングが2本タイプ』のWリング・ボルトや『岩から露出する部分の長いタイプ』等も市販 されていて、ごく短い期間だがル−ト開拓や緊急時・想定で岩への挿入長さが一般的なリング・タイプ よりも短く製造された「特殊品」も愛用者が多かった。私も、このタイプを実際のクライミング時や沢や 予備携行の必要品として、持参する事は多かったが実際に岩場に打ち込み残置するという経験は 少なかった。今現在はノ−マル・タイプの普及品しか市販されていない。 Wリングや特殊な、リング・ボルトは消え去った。国内の岩場で、初期の先輩達が打ち込み使用した 骨董品タイプの現物を、岩場で発見・目にする機会も、まず不可能な状況。 『リング・ボルト&RCC型ボルト』共に、使用時の最大の注意点は、これらのボルトがエキスパンション型 のボルト・タイプだと言うことで、先端部の「楔=クサビ」がボルト本体を拡張させる原理を正しく、理解して いないと角度の付いた「ドリル」で空けた「穴奥の形状・角度」が、拡張し無いという理屈が理解できない。 一度、判らない方は「ドリルとボルト」両方を手にとって、よく観察・理由を考えておいて欲しいものだ。 特に、最近の電動ドリル愛用者には、この原理原則を確実に理解しておいて欲しい。 リング・ボルトの最大の弱点は『リング部分の溶接箇所』この辺りも、常識として理解しておく事が大切。 |
適正な『深さでドリリング』ボルトを設置しないと、充分な強度が得られない。 |
最も『普及しているタイプ』
いったい何個、これを購入して
消耗・キリだけで何万円・浪費?
したか・・・・
2004年から、このタイプのアダプタ−を含めたボルト・キット一式 が私の愛用品となっている。 打ち込み専用ホルダ−は、バ−ゲンで超格安で購入できたので どうせ、誰かに譲るだろうと店内・在庫を全て入手して来た。 2006年で、予想通り譲る相手が多くて個人・所有は2本のみ。 この『ホル−ダ−』はドリルの交換時にエゼクタ−やレンチ不要 でホルダ−内部の構造で、ワンタッチでドリル類が簡単に脱着 交換が行なえて、非常に効率よく便利。 最近、返却必要ながらアメリカ製の最新ボルト・キットを試用する 機会に恵まれて『レスキュ−研究』目的で、実際に渓谷内の岩 でドリリング実験にて使用を体験した。 この種類の研究や開発・製作が停止してしまった日本では見受け られない斬新なアイデアが加えられていて、面白い。 |
機能面を含めて、材質や形状も全く改良・進化しない国産品と違い、フリ−クライミング主流の現在でも 海外では様々な工夫が施された、新しいタイプの『ボルト・キット』が登場している。 ボルトなんか『充電式ドリル』で充分と考えていれば、これらの旧式とも言われ出した手打ち「ハンド」 タイプでのボルト埋め込み時の『穴あけ』は不要と思われがちだが、レスキュ−の現場を想像しても重量的 に携帯しやすい、このタイプは未だに必需品であり、未知の岩場への旅立ちにも心強い用具となる。 充分に使い方に慣れ、使えるだけの腕力を持っている事が基本。ハンマ−の選択も大切だ。 |
実際に『ル−ト開拓』時に垂直を超えた壁中で 長時間・多数の『ボルト』を設置する作業は決して 楽な、行為ではなく数日間のクライミングや条件 の厳しい環境下では、効率の良いボルト打ちの 技術と共に、必要最小限での使用を助けるセンス と呼ばれる、体験からしか身に付かない能力も 要求される。 平地で手軽な岩にボルト打ち練習でドリリング したり、バッテリ−・ドリルで簡単に作業できる 経験などは、大きな岩壁の中では役立たない ものだ。 又、一分一秒を急ぐ緊急時や仲間の生命を救う 為に使用しなければ、ならない場合には腕が 疲労していようが、手首や肘が悲鳴をあげて鳴き が入ろうがハンマ−を振るう手は休めない。 |
適正な場所に、確実に正しい位置・角度にボルト 類を設置する技術は数を、こなさないと体得する のは難しい。 『バット・フック』や『ラ−プ』も受け付けない岩で 1本のボルトでしか前進できない場合には敗退 下降も困難な場所も、在り得る。 時間と労力の節約・体力温存の理由で設置する ボルトの浅打ち、を認める事も現場では仕方の ない事だが、一度・岩場に残されたボルトはピトン やナッツとは違い老朽化し朽ち果てたり、落石や 雪崩で抜け落ちるまで、その場に残されてしまう。 再登者が来なくても、自分の打ち込んだボルトに 責任を感じるならば、可能な限りエイド・ピッチでの 使用でも適正な残置・強度が最大に出る正しい 設置を心がけた方が良いだろう。 |
『1950年〜1970年代』に、かけて国産ボルトを積極的(乱用・気味)に連打して拓かれたエイド・ル−ト や岩場の中でのエイド・ピッチの多くは80年代から『フリ−化の対象』として、フリ−クライミングの場として 再生・整備されている例も多い。代表的なル−トには、関西・東海のクライマ−には古くから馴染み深い 鈴鹿・御在所岳の『藤内壁・中尾根バットレス』や兵庫・雪彦山『地蔵正面壁』等の、かっては前進用として 使用されていたダイレクト・エイド・ピッチの『ボルト・ル−ト』が生まれ変わったフリ−ル−ト。 2000年以降は『老朽化し基本の強度が不足』するエイド用の残置ボルトや、かってのボルトをプロテクションとしてリニュアルされた現代のフリ−ル−トで、最新の確実な『強度を有した』ボルト類に打ち替える『リボルト』と呼ばれる、活動が進展している。(他の多くのクライマ−からのコンセンサスを得る、努力は必要) |
トップのクライマ−の墜落を停止させる強度を一般的な『旧タイプのボルト類』に求めるのは根本的な間違い。 同じく、クライマ−の命を預けてしまう、ラペル時や更に多人数の生命を預けてしまうレスキュ−作業時の支点 アンカ−・ポィント等では、設置する、設置してある『ボルト』を最大限の強度で使用する為の方法や他の用具を素早く短時間でバック・アップとして設置・連結する技術・方法を知り、使えなければならない。 |
『ただ単に登りたいから、だけの目的と理由で『ボルト』を使うならば・・・・考える時間・以前にクライミングを学び、知る努力も必要なのだろう。規範・見本・理想は半世紀も前から提示されて来たのだから。 |
『ル−ト開拓』『救助活動』時には、動物救助やビバ−クの為に『ボルト』を数多く使用して来た。 よく雑誌の文で「悪行の数々・・・」ボルトの使用を、さもフリ−クライマ−としての若さ故の間違い・失敗 の様に弁明とも受け取れる活字を見るが、私は「ボルトを積極的」に使用していた時期の想い出を悪行 の期間とは思っていない。使わずに突破できたであろう我が身の不甲斐無さや、能力の不足や恐怖心に 負けて、使用した記憶に悔しさが込み上げる事は、多々あっても・・・・・・ |
今から思い返せば、貧乏・費用の節約を口実として 思い切り恐くて、危ない「ボルト」の使い方を当時? は、けっこう平気(平気と思い込み)で使用していた。 倶楽部での使い方は、その頃としてもクレィジ− 高度を稼ぐ為の手段を「ボルト」だけに頼らず他の 用具で、更に困難度を追求すると、ある範囲からは 恐怖心を押さえ込む無理と無茶も選択肢の重要課題。 数ミリ・僅かな拡張を信じての『アルミリベット』や市販品 のフックをカット・削り出して角度も変えての文字通りの 『改造バット・フック』にボルトの抜けた穴に、押し込む 単純ナッツに、ドリリングの効率を高め、時間の短縮を 求めた細径ドリルの使用・・・などなど。 仲間と別に活動していた岩場での開拓クライミング時 には、重荷を背負ってのラペル支点がリングボルト1本 に、ただの六角ボルトを穴に打ち込んだだけ・・・ それをスリングで連結しての全体重を預けての連続 下降など、今から思い返しても冷や汗ものだ。 |
『ボルト打ち』は、簡単だと発言したり、その使い方に 関して『フリ−クライマ−』としてのみの立場、スタイルで 主張して『不要論・否定論』を展開する人達の中で実際 現在の墜落を確実に止めえる『専用品』とは別の旧式 エイド・クライミング用のボルト類で、挑戦していた危険 な課題や「フリ−クライム」を、理解出来るだけの体験や 同じ時代の中での、実践経験があるのだろうか。 『エイド・クライミング』は、それ自体が一つの独立した ジャンルかも知れない。 |
幸運な事に、私達が本格的に『参入』し出した時期には『ディレッティシマ論争』は過去の、主張・意識と思われていて、登攀倶楽部での集団・グル−プとしての開拓活動も、個人的な冒険的なクライミングにおいてもボルト連打のル−トを攀じる事も、そういった種類のル−トを開拓する行為も問題外・そんな種類のクライミングに費やすだけの費用も時間の余裕も、私達は持ち合わせていなかった。 |
ボルトと言う『用具』を否定したいならば、フリ−クライミングにおける『安全』を19世紀まで戻す必要があるだろうフリ−クライミングの技術的向上と『安全の保障』に、必要なボルトは認めるがエイド用や、それに付随する使い方は認めないという偏った意見は少し、見ていて醜い。 本当の意味での『ボルト使用の拒否・論理』は、別の次元での更に本質的なクライミング論理に存在していて Wボナッティ−やメスナ−は、コレを『不可能の抹殺』と呼んでいる。 |
『現在のクライミング』で、国産タイプの『リング・ボルト類』が、はたして全て不要になったのだろうか? 応えは、個人・目的の範疇だろうか?用具はスタイルとも連動するし『夢や憧れ』にも関係する。 一概にフリ−クライミング至上主義で『強度が不足するボルト』が全ての場面で不要とは断言できない クライミングにボルトを持ち込むか、拒否するか。トップの墜落を確実に止めえる製品が、絶対・唯一の 用具なのかは、選択の問題。基本的には、不可能の抹殺を認めるか、認めないかが基本問題。 |
ボルトの抜けた穴に直接・差し込んでワイヤ−に加重すると、小さな梃子の力が先端部に働いて 体重ぐらいならば保持できる。日本独自のエイド・ギアと言えるが、積極的に使った記録を私は知らない。実際に使用したのも2回だけで、『バット・フック』と比較して、何か利点があるのか分からない。 積極的にエイド・クライミングで使うとすれば、ワイヤ−が少し長過ぎる点と、先端部の金属塊に改善の余地が多そうだ。死滅した?これから、使われる可能性の無い用具の一つだと思われる。 |
日本国内の代表的な『本場・岩壁』に拓かれたル−トで、2本リングのボルトは大量に使用されたエイド・クライミング(当時は人工登攀と呼ぶことが多かった)=ア−ティフィシャル・クライミング アブミを積極的に利用した、エイド・クライミングでは、一つの支点に複数のカラビナを取り付けられると便利だと言う、理由で誕生した・これが日本オリジナルな『ボルト』で、1本リングと共に、一時期は日本国内の岩場の多くで、実際に使用し、見たクライマ−は多い。 『RCC型』と、同じく岩から飛び出ている部分が、長く強度的に特別・優れていたタイプではなく、アブミ使用でのクライミングでの利用だけを考えて、製造・利用された特殊な『ボルト』他国に似た物を見ない。『リボルト活動』が、盛んな?関西の岩場からは数多く、撤去されて見る機会も少なくなった。 |
全身の水分が全て蒸発してしまったか、そんな乾きに苦しみながら清冽な黒部川を、相棒の動きを確かめては時々、眼下に見ていた、とある『壁』も別ル−トでの喉の苦しみも忘れて、数日目に同じ様な苦痛を楽しみに随分と高い場所まで登り付いていた、2日前の到達点も横位置に少し頭を傾ければ、確認できる場所に来て、頭の中は『冷たい黒部川に頭から、つこんで、たらふく水を飲む事』を、考えていると頭上から相棒が、真っ直ぐに落ちて来た。1本目に体重を預けて、何やら叫んでいた数秒後・ザックとヘルメットを私に向けて落下して来た。確保している9mm2本のロ−プの、赤い方だけに、急激にシヨックが襲って来ると、すぐさま2本目にも強烈な衝撃が間髪入れずに襲って来た。ガクン・ガクンと3回ほどの中間支点のボルトが相棒の体重を押し止められずに次々と抜けていく光景は、真っ直ぐに私目がけて頭から落下して来る物体を見つめて恐怖を感じる時間も与えてくれなかった。ギユッとロ−プを握りしめ、ヘルメットを目前の岩面に擦りつけ、体が浮き上がるのを、セルフ・ビレ−で短めに固定しておいたロ−プが、食い止めてくれた。 相棒は、最初のスリングを巻き付けて、入った『細い潅木』の、手前まで落ちてきて無事に停止。幸いにも壁が全体的に被っていて落下ポィントは庇の中間、辺りからだったので墜落は空間遊覧。どこも身体を岩角や潅木に、打ち付けなかったらしい。抜けた金属片が私のカラビナ近くに5個・ロ−プを伝って、辿り着いていた。手製とおぼしき錆びたボルト・ハンガ−が2枚に、チップが付いたままの『リング・ボルト』が2本に、上・写真タイプの、2本リングのボルトが1本だ。 トップを交代して、支点の抜けた箇所に新たに、危ない用具を使って庇も突破して、このル−トでも無事に終了点からフライパンの上で、太陽にソテ−に、されている数時間で川原に帰着。リ−ドの途中に、2本リングのボルト箇所で溶接部から、延びて楕円に変形してから、ちぎれたリングを確認。 墜落衝撃には、とにかく弱いのが・このタイプのボルトだと言う事を実感した頃だ。 |
平らな地面に立って、安定した姿勢の中で安全確実に、そして楽に『ボルト打ち練習』を、行っていたクライマ−を大勢、知っている。そういった練習跡の穴が残された『岩場』が、日本中に数多くある。実際の現場では、そういった練習しか行っていないと、実践の場では、あまり役立たない事が多いし、数多くの穴を残したクライマ−が本当に、必要な箇所にボルトを残して来たのかも、少しばかり疑問だ。 緊急時に使用されるかも知れない、用具なので事前の『練習』は、大切なのだが、だからこそ練習の『場』の選択は重要になる。これからは『岩場の環境・保全』と言う意味からも、あまり自由勝手は、許せなくなるだろう。電動式『ハンマ−・ドリル』の普及と、使用者の増加で問題が起きる可能性は、高い。 |
もう、いいかげんに止めにしておけば良いのに、そう思ってしまう『ボルトの試し打ち/ドリリング練習』の痕跡は、40年前とは違って車を降りて、数分といった労力・不要な場所に異常に多い。違った意識とか感覚が必要な筈だ。試し打ち、にしろ練習目的にしても、違った方法が幾らでも選択出来るのだから。 『キャニオニング』の、現場でも2006年ごろから、かなり怪しい設置方法で残置されたボルトを見る様になった。せっかくの高強度の『新しいタイプのボルト』を使用しているのだったら、適正な設置が望まれる。 |
2008年4月に確認『撮影』 |
単純な形状なので、まず間違った位置で岩場に設置される事は少ないのだが、以前よりも『基本』や『常識』が通じないクライマ−が急激に増加しているようで、以前には考えもしなかった、上下が間違った設置例を新しい岩場で見受けるようになって来た。旧式の『リングボルト』=現在では入手も難しい筈だが、ごく最近になって打ち込まれたと見られる。明らかに、岩に対しての打ち込み方向が間違っている『上下が逆』 |